昔の名前で出ています
「昭和歌謡を弾き語り」
作詞家の星野哲郎は
新宿歌舞伎町のある店で
盃を傾けていた。
そこへ昔馴染みのホステスから
電話がかかってくる
「先生、ご無沙汰しています。
いま大宮のクラブにいるんですけど、
遊びに来てくださらない?
昔の名前で出ていますから……」
鋭敏な作詞家の耳に
この言葉は突き刺さる
書き上げた一曲は
ある女性歌手のために
レコード会社に届けられた
その頃クラウンレコードでは
日活の大スター小林旭の
新曲に関する会議が続いていた

プロデューサー馬渕玄三は
今までの小林旭と真逆の新境地を
担当ディレクターに求めた
小林旭の担当、矢野は
マイトガイの小林に
女歌を歌わせる提案をする
酒場に強い有線放送で
まずホステスから馴染ませる
そんな思案の中
星野哲郎から預かっていた
酒場の女を歌った歌詞を思い出す
「昔の名前で出ています」

この曲がマイトガイの小林に
相応しいかどうかで
星野と矢野は激しく意見を対立させた
歌詞の内容も初稿から
4回も書き直される
当時、小林旭は
ゴルフ場経営の失敗で
多額の借金を背負っていた
小林旭はこの新曲をメインに
一晩にクラブを五軒も六軒も
回って血へどを吐くほど歌い
その努力が功を奏し
レコードは2年後に突然売れ始め
売り上げは250万枚を超える

動画をご紹介
(参考文献)
塩澤実新 著
「昭和歌謡100名曲」
北辰堂出版
さて今回はもう一曲!
小林旭のヒット曲をご紹介
作詞:星野哲郎
作曲:叶弦大
「自動車ショー歌」


YouTubeの動画です
この曲はオリジナルの歌詞
「ここらで一発シトロエン」が
要注意歌謡曲指定制度基準に抵触し
放送禁止処分を受けたため
「ここらで止めてもいいコロナ」に
変更して再録音したそうです。
人生、波乱万丈ですね
マイトガイ小林旭
やっぱり熱い男です!

今回はこの辺で